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別府社長の手帖8
「ペロペロ、ソフトクリーム」
文章 別府倫太郎 2014年5月31日更新
僕は、小児ネフローゼという病気の関係で、
月に1回ほど、病院に行っているのだけど、
その帰りに僕が、よっていく場所がある。
それは、「ソフトクリーム屋」さん。
外見は、ピンク色。
でも、だからといって、派手でもない。
けっこう、古くからやっていそうな感じで、
なかに入ってみると、おばちゃんが、どんど構えている。
そんな、ソフトクリーム屋さん。
売っているのは、ジェラートと、ソフトクリームのみ。
でも、お客さんは、2、3人は、行くたびに居て、
美味しそうにペロペロとなめている。
その様子を見ていると、何とも、美味しそうで、
僕も「ペロペロ」したくなった。
なので、一つ、頼んでみることに。
頼んだのは、ソフトクリームのバニラ。
おばちゃんが、くるくるっと、コーンをまわして、
絵にかいたような、「THEソフトクリーム」が出てきた。
ペロッとなめてみると、甘くて、甘くて、美味しかった。
だけど、後味、すっきり。
僕は、外のベンチにすわって、またペロペロ。
そうしていると、サラリーマンが、店内の様子を見ている。
なんだか、気になるらしい。
ちょっと、食べたくなって、入る人もいるし、入らない人もいる。
だけど、お店のなかに入るサラリーマンをみると、
こっちまで、嬉しいというか、
ソフトクリームは、万人共通だなぁと、思った。
でも、なぜ、ここまで、僕は、このお店に
惹きつけられるのだろう。
そんなことを思っていたら、こんな、話しを思い出した。
それは、「同じサンドイッチでも、機械が、作ったのと、
おばちゃんが作ったのとでは、なんか違う。」
ということ。
このソフトクリームもそうなのかもしれない。
「味」とかではないのだけれど、食べていて、心地いいのだ。
そして、このソフトクリーム屋さんは、氷屋さんが来て、
お客さんがきて、頼んで、おばちゃんが、くるくるっと、
作って、という「循環」というものが、ある。
その「循環」、つまり、出入りで、起きる「風」が、
僕を心地よくさせるのだろう。
もちろん、肌で、感じる風とは、ちがう。
感覚で、「なんか、この店、心地いいな」という感じ。
そんな、「風」が、このお店には、あると思う。
なので、気持ちいし、心地いい。
だけど、いっくら、美味しいとか、話題のお店でも、
「風」が、なければ、僕は、落ち着かない。
これは、もう、どうしようもない感覚。
そして、今、「美味しい」お店は、増えてきていると思う。
だけど、「風」が、ない。「循環」が、ないと思うのだ。
僕は、そんな社会で、生きられるのかと、
すこし、不安になってしまう。
だけど、このソフトクリーム屋さんが、
ある限り、僕は、多分、大丈夫。
そんな、思いを胸に、また、「ペロペロ」したいと思う、僕でした。