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別府社長の手帖18
「寒ブリと焼き芋」
文章 別府倫太郎 2015年2月13日更新
今日は、朝起きて午前中はボーっとし、文を直したりして過ごしていた。
そして、そうしてる間にお昼になりお腹が減ったので母はうどんをゆでようとした。
そのことからこの話は始まる。
しかし、そのうどんを食べる人がいないことにぼくは気がついたのだ。
ばあちゃんは、郵便局に行きじいちゃんはどこかに行ってしまった。
いつも、ご飯近くになるとどこかに行ってしまう。
それがばあちゃんとじいちゃんなのだ。
「GPSでもつけとけばよかった」と話すぼくに母は
「お寿司屋さんにでも行く?」と言う。
「えー!」と驚くぼくだったのだが内心はいいなと思っていた。
だけど、「そんな贅沢はできないし・・・」と言ってしまうのだ。
「う〜ん」と母は言い、うどんを鍋に入れようとした。
その時「待って」と言い「やっぱり行きたい」と小声で言う。
すると母は、やっぱりね、という感じで気分転換もふくめ
お寿司屋さんに行くことにしたのだった。
そのお寿司屋さんとは家の近くにある小さなお寿司屋さんで
回転寿司ではなくカウンターと座敷がある美味しいお寿司屋さんだ。
ぼくはそのお寿司屋さんのドアをあけ、店の中へと入る。
お寿司屋さんのお父さんはいつものように、にこにこと迎えてくれた。
その瞬間、ぼくはここに来てよかったと感じたのだ。
そして、ぼくは席に座りにこにこしていた。
すると、その顔は驚きの顔へと変わった。
なんと、そこには大きい魚がまるまる一匹あったのである。
「えぇ!なんていう魚ですか」と聞くとその魚とは寒ブリなのだそう。
9kgはあるというその魚を持ち上げお父さんはまたもや、にこにことしていた。
この人は本当にここが好きなんだな、と思ったし、
ぼくもここが本当に好きなのだと改めて思うのだ。
そして、ぼくは寿司の並を頼み、母も同じものを頼んだ。
すると、お父さんがまた
「この寒ブリを切るから、それを今から握ろうか?」
と言う。ぼくは思わず「はい」と答えると、
たこやイカなどと共に寒ブリの握りが出てきた。
ぼくはなんて、美しんだろうと思い、早速
たこやイカやかんぴょうを食べる。
やっぱり、美味しいものは美味しい、ぼくは確信するのだ。
そして、ぼくはその気持ちのまま「寒ブリ」も食べる。
すると、口の中で寒ブリが溶け、びっくりするほどに甘かったのだ。
「美味しいです」
そうお父さんに言うとまたもや、にこにことしてくれた。
そして、その後、お父さんのすすめで旬だという細魚(さより)も
食べたのだがこれまた、口の中ですっと広がり、
そこに何ともいえない甘さが広がる。
ぼくはすっかり満足し家に帰ったのだった。
本当にたまにしか行かないのだけれど、にこにこと迎えてくれ
2千円以下でこれほどまでに美味しい、と思えたのは
本当にうれしかったのだ。
しかし、その寒ブリなどにあった「甘さ」とはなんだろう、と考えると
ふとぼくの中には、昨日食べた焼き芋が浮かぶ。
何もどくどくな製法で作られたわけでもない、じいちゃんとばあちゃんの
焼き芋なのだけれど、これもぼくの大好きなものなのだ。
スーパーではかえない、この地のものの焼き芋。
その中にある、独特な甘さと寒ブリの甘さがぼくの頭の中でふと混ざる。
不思議にもその甘さは、同じような気がしてきたのである。
口の中で自然に広がる、やさしさを含んだ甘さ。
それが寒ブリでもあり、焼き芋なのである。
みなさんにこのことを伝えてもきっとわからないかもしれない。
けれど、きっとお寿司屋さんのお父さんはわかってくれるはず。
そんなふうに思いながら、またお寿司屋さんに行き、
あのにこにこを見たいと思うぼくなのであった。
作者
別府倫太郎 プロフィール

2002年12月5日生まれ。
新潟県十日町市在住。
3年前から始めた「別府新聞」の社長でもあり、
別府新聞のたった一人の社員でもある。
「学校に行っていない思想家」「ポレポレぼうや」など
色々な呼び名がある。